日本商工会議所によれば、賃上げを実施予定と回答した企業は58.2%で、昨年より12.4ポイント増加したとのことです。
そのうちの62.2%は、業績が改善していないにも関わらず賃上げするとしています。
賃上げ率については、「2%以上」とする企業は58.6%、「4%以上」とする企業は18.7%あります。
賃上げが増加する背景には、大きく2つの事情があるからではないかと思います。
一つ目は、物価の上昇。
日本銀行によれば、極端に増減した品目を除く「苅込み平均値」は、昨年12月、1月とも前年同月を3.1%上回り、過去最高となっています。
生活のほとんどを給与に依存しているであろう労働者にとって、物価上昇は賃金の実質的な下落、いわゆる賃下げと言えるかも知れません。
二つ目は、慢性的な人手不足です。
2月の有効求人倍率は、1.34倍。
これは、一人に対して1.34件のお仕事があり、求職者の立場では売り手市場の状態です。
また、2月の完全失業率は前月より0.2ポイント高い2.6%でした。
仕事を探している人が増えているとの数字ですが、総務省統計局は、「より良い条件の仕事に就くため、自己都合退職する人が多い」と分析しており、会社側が有利とは言えないようです。
岸田政権は、不利であった自己都合退職による失業給付について制度を見直し、転職しやすい環境を整えようとしています。
つまり、退職しやすい環境にすることで、人材の流動性を高めようとする政策です。
これらのことから、企業によっては今後さらに退職者が増加し、人材確保が困難になるかも知れません。
さらに、株式会社東京商工リサーチによれば、1ー2月の人手不足による倒産は21件あり、昨年同期の2.6倍に急増しているとも報じられています。
戦国武将、武田信玄は、「人は城、人は石垣、人は堀」との言葉を残しています。
人なくしては、企業は存続しません。
6割近い企業が賃上げを計画している背景には、人材確保への危機感があるように思います。
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