お坊さんになった毒蛇

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はじめに

千年以上前、播磨の国の赤穂郡に、野磨駅家(やまのうまや)という宿所がありました。
現在では、兵庫県赤穂郡上郡町落地にあたります。

駅(うまや)は、貴族や役人などが、宿泊や休憩のため使用していた施設です。

主要街道沿い16kmごとに設置されていましたが、とりわけ重要であった山陽道には、8kmごとに設置されていました。

現在、場所が確定されているところは、ここ「野磨駅家」と、一つ東の、たつの市揖西町小犬丸にあった「布施駅家(ふせのうまや)」だけのようです。

「お坊さんになった毒蛇」のお話は、「野磨駅家」のできごととして今から千年近く昔の本、「今昔物語」に書かれています。

そして、ここの地名は、「落地(おろち)」です。「おろち」は、大蛇(おろち)を指す言葉ですね。

そう、千年前の物語が、地名になって残っているのかもしれません。

お坊さんになった毒蛇

昔々のこと、金峯山(きんぷせん)に、転乗(てんじょう)という僧がいました。

転乗は、気が荒く、いつも怒ってばかりいました。

幼いころから法華経を習い、全8巻のうち6巻までを覚えてしまい、残りの7、8巻を覚えようとするのですが、どうしても覚えることができませんでした。

そこで転乗は、蔵王菩薩のお堂にこもり、お経を覚えられるようお祈りしました。

ある夜、夢枕に菩薩が現れ、こう言いました。

お前の前世は、長く、大きな、6メートルを超える「毒蛇」である。

野磨駅(やまのうまや)に住んでいたのだが、ある日、聖人がそこに泊まった。

天井にいたお前は、飢えていたので、この聖人を食ってしまおうと考えた。

しかし、それに気づいた聖人は、手を浄め、口をすすぎ、法華経の読経を始めた。

お前は、気持ちが落ち着いてきて、そして、一心に聞き入ってしまった。

6巻まで読んだとき夜が明けてしまったので、聖人は、出発してしまった。

お前は、人を食べなかったこと、そして、法華経の功徳を得て、人に生まれ変わり僧侶になった。

しかし、7巻からは聞いていないので、今も覚えられずにいる。

また、お前が気が荒く怒ってばかりいるのは、前世が毒蛇だったからだ。

これからひたすら精進し、法華経を読みなさい。

そうすれば、願いは全部かない、来世では、生死の苦しみから離れられることができるようになる。

その後転乗は、ますます仏さまを深く信心し、法華経を読みました。

そして、嘉祥2年(849年)に亡くなられたと伝えられています。

野磨駅家(やまのうまや)のちょっとしたお話

平安時代、京都で作家、エッセイストをしていた「清少納言」。

「枕草子」というとても有名な随筆集を書いているのですが、その中で、「駅は梨原、望月の駅。山のうまやは、あはれなりしことを聞きをきたりしに、又もあはれなることのありしかば、なほとりあつめてあはれなり。」

野磨駅家(やまのうまや)は、とてもとても趣(おもむき)がありますよ・・・って、言っているようです。

ちなみに、「梨原」という語が出ていますが、野磨駅家(やまのうまや)がある「落地(おろち)」のすぐ隣が「梨ケ原」です。

昔々、京都で、野磨駅家(やまのうまや)や梨ケ原が知られていたようで、少しうれしく思います。

あはれなる野磨駅家を訪ねて〜上郡町・落地飯坂遺跡〜 Orochi-iizaka Ruins in Kamigori - SPring-8/SACLA 利用者情報
あはれなる野磨駅家を訪ねて〜上郡町・落地飯坂遺跡〜

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